凪都。

なつの観察日記

ごじ

2023/09/04 22:00

長くなる気がする。

 

中也の詩としてよく聞くのは「汚れつちまつた悲しみに・・・・・・」だろう。

角川文庫で佐々木幹朗さんの解説を読んだ時、「汚れつちまつた」が「東京弁の使いそこない」であることを知った。この文を読むまで、「汚れちまった」だと思っていたのできちんと文を読んでいないことを恥じた。それから「よごれつちまつた」と口に出してた。たった一文字「つ」が入っただけであるのに、そこに詩の深さがある気がした。「汚れつちまつた悲しみに・・・・・・」の全文を覚えているわけではないが、促音の誤用であるという知識によってずいぶん親しみを感じている。私が勘違いていたように詳しくない人は「汚れちまった悲しみに」と口に出すだろう。

だから先日、ひとりの友人が「よごれつちまつたかなしみに」と言った時勝手に盛り上がってしまった。ずいぶん嬉しかった。ずいぶん嬉しかったので、確か誤字であることを伝えると友人はとても笑っていた。朗らかに、快活に、腹を抱えているかのように笑ってくれた。確かであることの証明として、佐々木さんの解説部分を見せるとさらに笑ってくれてとてもうれしい気持ちになった。伝えてよかったと心から思えたことに感謝する。

いつか友人が「よごれつちまつたかなしみに」という言葉で誰かを笑わせているといいなと思う。